こべるん ~変化していく神戸~

再開発や超高層ビルの誕生によって変化していく神戸の街並みを追っています。

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大阪ステーションシティをレポート 

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JR西日本が総力を挙げて臨んだ大プロジェクトである大阪駅改良工事。同社管轄内において最大の乗降客数約85万人を誇り、国内でも東京・新宿、池袋に次ぐ有数の巨大ターミナルである同駅を30年ぶりに改良するにあたり、駅舎全域に渡り大改装を施し、北側に新たな超高層複合ビルを建設、南側の既存複合駅ビルを増床し、両ビルに挟まれた駅舎上に橋上通路と巨大屋根を設置するという大胆な発想を用い、2100億円の総事業費を投じて完成させた「大阪ステーションシティ」。二つの百貨店、ファッションビル、ホテル、オフィス、映画館を有する複合商業施設として生まれ変わったこの巨大駅ビルが、大阪市内のみならず、関西一円を巻き込んだ百貨店及び商業施設の消耗戦争を引き起こす着火点となったのは言うまでもありません。

この巨大プロジェクトを成し得たJR西は次に三ノ宮駅の改良工事構想を検討しています。神戸の話題のみを扱う当ブログですが、今回は特別番外編として、この改良工事において垣間見えた「新生三ノ宮駅」の将来像を考えつつ、「大阪ステーションシティ」を訪ねてみました。

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この新駅ビルのシンボルは何かと問われると、とにかく目玉施設がテンコ盛り状態で即答しかねますが、敢えて駅という施設本来の主用途に着眼点を置くと、巨大ドーム屋根に尽きると思います。東西長約180m、南北長約100m、最高部50mという規模を誇り、自然光をガラスパネルからふんだんに取り込む設計を採用。ホーム全体をドーム屋根で覆う方式は欧州のターミナル駅をはじめ世界で取り入れられていますが、これ程の規模は日本では初の試みと言って良いでしょう。

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迫力ある大吹き抜け空間ですが、この大屋根でも駅構内への雨の侵入は防ぎきれずに、撤去するはずだった各ホームの屋根が未だ残っており、JR西ではこれらのホーム屋根の透明化を検討しているようです。列車を降りたら開放感の醍醐味が興ざめです。更なる費用が掛かりますが、開口部に何らかの対策を施せないのでしょうか。設計ミスとは言い難いですが、開放感を求めた上での痛恨の極みですね。

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ドーム屋根下の中央に建設されたのがこの橋上通路。2層式で下のフロアは駅改札やコンコース、上のフロアは「時空(とき)の広場」と名付けられた巨大な公開空間として整備されています。新たなメイン改札や乗換え経路を設置したことで、ホーム階下のコンコースの混雑緩和を図り、南北間の回遊性を向上します。更に、現在、建設が進んでいる北ヤードの再開発プロジェクト「グランフロント大阪」が開業すると、南北をダイレクトに直結するこの通路の役割は飛躍的に高まることになるでしょう。

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橋上通路内のコンコースです。東西の壁面は開口部の大きなガラスとフレームで構成され、非常に明るく眺望にも優れた空間となっています。階高もおよそ2フロア分あり、駅というよりは空港をイメージさせる清潔感と開放感で、空港が飛行機の離着陸を見せて娯楽性・観光性を持たせるのと同様に、電車の発着をエンターテイメントとするアイディアは夢があります。その上でも現存ホーム屋根の撤去は必須です。

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「時空(とき)の広場」には金・銀二つの大時計が設置されています。またオープンカフェも開業し、待ち合わせ、憩い、集いの巨大空間を演出しています。ドーム屋根があってもなくても駅舎上の空間をこうした方法で活用できたことは大いに意義のあることだと思います。

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こちらがカフェの様子ですが、とにかく爽快で明るく、気持ちの良い空間ですね。ただ真夏や真冬はどうでしょうか。空港に関しては日本も世界もそんなに遜色ないかと思いますが、ここまで高度に発達した鉄道社会(恐らく世界一)を有する日本がこと駅(特に地上駅)に関して貧相な感は否めませんでした。これまでの開発も駅ビルの建替えに重点を置き、駅舎にはあまり力が注がれて来なかったので、大阪駅の今回のリニューアルはそんな日本の今後の鉄道駅改良に一石を投じることになるかもしれないと思いました。

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こちらは既存のホーム階下コンコースです。改良工事がスタートして早い段階から手が付けられて行きましたが、各部分の工事を少しずつ完了させていく方式によって長期間を要しました。とにかく元々、巨大だった大阪駅が更に巨大化したので、同駅の利用に慣れていない人にとっては更に複雑化が進みました。その為、道案内の表示はこれでもかという程の数が設置されています。

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総体的に今回のリニューアルで駅舎内は白、黒、グレーのモノトーンを基調とした色でまとめ、その中にアクセントとしてイエロー等の鮮やかな色をあしらい、コントラストを強く感じさせる構成となっています。清潔感と視認性、そしてモダンで高級感のある感覚を持たせたといったところでしょうか。しかし一部、コスト削減のためか美装化が中途半端なエリアやチープな部材が使われているのが分かる場所もあり、あまりにも巨大なターミナル駅全体を改良することの難しさも垣間見られました。

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さて、次は駅舎から駅ビルに話題を移します。駅北側に建設されたノースゲートビルは、これから発展を遂げる北ヤードへの玄関口として、その威容を誇るように聳えています。この巨大な建物を北側から眺めた場合、まず目を引くのは中央に鎮座する大アトリウム空間です。

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このアトリウム空間は先程の橋上通路と直結しています。こちらもドーム屋根同様に開放感溢れる吹き抜けが素晴らしいのですが、こちらも雨が降ると吹き込んでしまうようです。前方で建設が進む「グランフロント大阪」のAブロック棟と、新設される駅前広場を介して繋がる予定です。

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新しい街へ開ける玄関口として今後、様々な活用法が期待される空間です。また橋上駅、建物内の二つの商業ビル、既存ホーム階下コンコースを結節する中央アクセス点としての役割も担っています。この周囲は非常に目を見張るものがあるので、歩き回りましたが、そこで感じたのが動線の複雑さです。駅ビルという建物の構造上、アップダウンは避けては通れません。ビル上層部まで万遍無く人を回遊させる為にいかに工夫を凝らすかが課題です。橋上駅、時空の広場、既存コンコース、更にこれから紹介する駅ビルの屋上庭園等を結ぶエスカレーターが縦横無尽に張り巡らされていますが、各エスカレーター上での移動距離が長く時間も掛かります。立体通路も数多く、敢えて駅施設内で街歩きのような感覚を覚えさせるような仕掛けなのかもしれませんが、現在の開業集客効果がひと段落した時点で、この立体動線がどう評価されるのかに注目したいところです。

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アトリウム空間から梅田スカイビルの屋上庭園にアクセスするような長いエスカレーターを上がると、ビル10階にある「風の広場」に出ることが出来ます。ここはレストラン街、シネコン、オフィスタワーへの中間アクセス点的な位置付けにもなっています。植栽が行われた広場は屋上庭園として買物客、見物客、施設内就業者の憩いの場として賑わっています。広場に面してファミマがあったのには驚きましたが、なるほどこの位置付けならではの好立地だと感じました。

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風の広場からは更に上階へとアクセスできる長い階段が設置されています。基本的に建物内を歩かせようとする試みしょう。同様に階段で屋外庭園から庭園への移動といった形はすでになんばパークスで採用されています。パークスでも思ったことですが、緑の面積をもっと増やせないものかという気がします。重量等の関係で構造上の制限はあるかと思いますが、息苦しくなる都会のコンクリートジャングルの中でもっと緑や芝生の溢れる憩いの場が天空にあったら素敵だと思います。

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階段を登りきると最上階の天空の農園のある広場に出ます。梅田の超高層ビル群に取り囲まれたまさに都心の真っ只中。きっと夜景も素晴らしいことでしょう。新たなデートスポットとしても活躍しそうです。

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屋上広場と言えば、旧アクティ大阪を増床させて誕生した反対側のサウスゲートビルの10階にも「太陽の広場」と名付けられた屋上広場が設けられています。ここでも都心の空を満喫しながら、南側の眺望と軽食等を楽しむことができます。

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伊藤忠が本社を移すことで話題となったノースゲートビルのオフィスタワー。高層棟の14-28階に1フロア、1500平米の事務所スペースを提供する高さ150mの超高層ビルです。伊藤忠は20-27階に入居する予定で移転時期は今夏とされています。その他の全ての階も入居企業が決まり、満室稼動するそうです。やはり京都、神戸、新大阪、関空とどこへでも一本でアクセスできるJRの機動性が評価された結果だと思われます。ただデザイン等、周囲への及ぼす影響を考えると、このノースゲートビルのオフィスタワーは機能性に振り過ぎたような気がします。特に西面の壁面処理はもう少しどうにかならなかったのでしょうか。強い西日の射す面には事務室を向けず、極力窓を減らすことで室温上昇を防いで空調電力を抑える試みは評価できますが、建物のシンボル性を考えるともう少し工夫が欲しかったところです。

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ノースゲートビルの西側を陣取るJR大阪三越伊勢丹。北浜の大阪店を閉店した三越はそもそも現在のヨドバシカメラマルチメディア梅田のある北側一等地に出店を試みていました。旧国鉄清算事業団による同地の入札方式による売却において三越は最有力だったにも関わらず、土壇場でダークホースであったヨドバシに敗退し、その後、同社が伊勢丹との合併を経て、ようやく念願の大阪駅前出店が実現しました。同店はノースゲートビルの地下2階-地上10階に約5万平方メートルの売場面積を構えています。

JRによる新駅ビル+百貨店の勝利の方程式はこれまでも各地で実証されてきました。大阪駅に先行して開業したJR博多駅ビルの阪急も好調な滑り出しを見せました。しかし三越伊勢丹は施設としての集客力は抜群なものの、肝心の売上高は目標に届かず、開業月は同施設内に半分以下の売場面積で出店するJR西のファッションビル「ルクア」とほぼ変わらない40億円台。伊勢丹の自主編集売場等でも話題を集めつつも苦戦と誤算の文字が見え隠れします。もちろん東日本大震災後という特殊な状況もありますが、ルクアの好調ぶりと比較すると必ずしも震災の影響のみが要因とは思えません。この結果は、新駅ビル内の百貨店が独り勝ちする構造がもはや磐石ではないことを物語っています。

そもそも百貨店の在り方が問われ、次々に全国のデパートが姿を消していっている現況と、巨艦百貨店の本店がひしめき合う大阪都心において、いかにJR大阪駅ビル内とは言え新たな百貨店需要を掘り起こすことができるのかどうか疑問の声もありました。大阪百貨店戦争を引き起こした同店の苦戦スタートは皮肉な結果とも言えますが、今後、控えている阪急梅田本店や近鉄阿倍野本店等の巨艦店が全面建替開業を控える中、どう顧客獲得を進めながら独自色を出していくのか。今後の同店の動向が注視されます。

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一方でこちらが絶好調のルクア。JR西が満を持して臨むファッションビルの記念すべき1号店です。今後はJR東の運営する駅ビルファッションブランド「ルミネ」のように管内各地に出店し、ブランド価値を拡大していく方針です。ノースゲートビル東側の地下1階-地上10階の11層(売場面積約2万平方メートル)を占め、198店がひしめき合います。梅田・関西初出店を中心に女性とカップルをターゲットとしたテナント誘致策が功を奏し、早くもその存在感を誇示し始めています。開業効果が落ち着いた後もこの好調を維持し、知名度を高めることが今後のルクアブランド成功の鍵となるのは必至です。

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駅を挟んで対峙する大丸梅田店の入居する旧アクティ大阪は南側の駅前広場に地上15階建ての新ビルを増設し、サウスゲートビルとして生まれ変わりました。この再整備により大丸梅田店の売場面積は約1.6倍の6万4000平方メートルへと拡大。売場構成には心斎橋本店の北館で培ったノウハウを元に、従来型の百貨店に拘らない誘致策によってユニクロ、東急ハンズ、ポケモンセンター、トミカショップ等が入居。同百貨店の成功モデルとなった新売場業態戦略「うふふガールズ」を梅田店にも導入。この新たな顧客層獲得策が順調で、売上高は大幅増となっています。

駅の北と南に分かれた百貨店が対照的な開業を迎えましたが、今後の百貨店がどうあるべきかを考えさせられる結果となりました。

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次に新駅ビルと周辺施設のアクセスについて少し触れたいと思います。上で述べたように、北ヤード方面へのアクセスは先行開発区域であるグランフロント大阪の開業に併せて整備されるものと思われます。一方で現在、阪急梅田駅方面へは従来あった歩道橋を拡張整備し、ビル前にはカリヨン広場と呼ばれる新たな玄関口が設けられました。これによってこれまで御堂筋南口前の横断歩道に集中していたJR大阪駅から阪急方面における連絡は緩和が図られました。

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一方で不便なのがヨドバシ方面へのアクセスです。梅田エリアの歩道橋やデッキは必ずしも各施設に連結している訳ではなく、効率的な整備が行われているとは言い難いです。梅田はどちらかと言えば民間デベロッパーが主体となって個々に開発を進めてきた感があり、行政は地下開発に明け暮れた結果、世界一とも言える地下空間が梅田地区一体を連結するまでになりましたが、一方、地上部ではそれぞれの施設の連携はその圧倒的な通行量を考慮するとむしろ貧弱です。

大阪ステーションシティを回ってみて感じたことは、いかに駅及び施設利用者の滞在時間増加に力を注いでいるかという点です。とにかく要所要所に人の集える場所、憩えるスペースが設けられています。そしてそういったエリアには必ずベンチとカフェ、そして時計が設置されており、巨大な施設内を歩き疲れても容易に一息入れることが出来ます。ステーションシティの名のごとく、施設が一つの街として機能し、全国のJR各社が進めている「駅ナカ」の集大成のような施設という印象を受けました。

これは従来より巨大商業施設の集積拠点である梅田地区の特徴に最も適した開発手法であると言えます。最近では梅田エリアの開発も街歩きを楽しむことができる方向性に変化しつつありましたが、ここへ来て再び大規模開発による巨大施設の集積化が一層進む様相を示しています。更にグランフロント大阪にも8万平方メートルの商業施設が誕生するということでますます巨大施設の梅田一極集中に拍車が掛かります。

巨大な大阪ステーションシティを徘徊した後、三宮に戻ってくるとJR三ノ宮駅周辺の敷地の狭さを痛感しました。やはり新駅ビルは駅舎を覆う形で建物を建設しなければ十分な床面積も駅周辺の広場確保も難しいです。しかし神戸の場合、梅田のように巨大施設がひしめき合って凌ぎを削る箱型の都市ではなく、駅前から二つの百貨店の間を結ぶ多種多様な路面店街を人が回遊するという面的広がりが強味です。神戸の開発にはこれを活かしながら強化していくことが必要とされる為、三ノ宮の新駅ビルは大阪駅のように施設内に人を留めてしまう構成ではなく、一旦は神戸に人を呼び込みつつもそれを吐き出し、そして最後にまた吸い込むというような仕掛けと工夫が必要であると思われます。JR西は成功しているルクアの2号店を三宮へと言及しています。ルクアブランドが十分に関西一円から西日本中へ浸透した後に、三ノ宮店が開業すればこれまで神戸マルイやイケア等が四国・岡山方面からも集客してきたのと同様以上に広域集客効果を期待することができます。

昨今に開業した空港が単なる交通拠点ではなく集客力を持つ娯楽施設へと変化を遂げてきているように、単なる巨大駅ではなく、同時に単なる巨大駅ビルではない、それが大阪ステーションシティが開業後たったの1ヶ月で1,000万人以上の来客を達成した秘密と魅力ではないでしょうか。これは集客・観光を主眼とする再開発において非常に重要なことです。三ノ宮駅改修には官民が協力し合い、ぜひとも神戸に相応しい方法で、同様に人を集めることができる知恵と工夫を凝らし、そしてそれに見合った十分な投資が行われることを願って止みません。


category: 大阪

2011/07/05 Tue. 21:13 [edit]   トラックバック: 0 | コメント: 9

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